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Kanako Takayama

詳しいプロフィールはウェブサイトにあります。 1996年から2000年まで、GANZ PRIVAT という日記をつけていましたが、トラブル発生により停止。 この度、職員組合の委員になったので、組合の活動と共に、研究者・教員としての活動も期間限定でお知らせすることにしました。 ブログ初心者です! 本ブログは、京都大学職員組合のウェブサイトとは関係なく、委員長が個人で開設しているものです。 公式サイトはこちらです。 ※ 2013年7月からは「副」委員長になりました。

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2015年5月 9日 (土)

京大賃金訴訟の経緯

5/7に京都地裁が下した京大賃金訴訟の判決について、一般の方にも広く知っていただきたいので、経緯をまとめて書きます。

京大教職員は2003年度末までは文部科学省に所属する国家公務員でしたが、2004年度に京大が国立大学法人化されたことにより、公務員ではなくなりました。
現在、京大の収入のうち、国からの運営費交付金が占める割合は約3割で、その他は、授業料(学生ひとり年間535,800円、法科大学院では804,000円)や研究助成金等の外部資金となっています。

2011年の東日本大震災を受けて、復興財源確保という名目で、国家公務員給与特例法が制定され、国家公務員は2012年度・2013年度に平均7.8%の賃下げを受けることになりました。地方公務員や独立行政法人職員は、この法律の対象ではありません。
ところが、すでにマスコミは当初から、復興財源とされたものについて、大幅な使い残しや不適切な執行があるとの指摘を続けていました。結局、この問題を調査した会計検査院の報告書によれば、2012年度に復興財源とされたもののうち、1兆3000億円が、被災地と関係のないところに流れていたとされました(使い残しを含めなくてもこの額です)。
そもそも、国家公務員のみにこのような極端に大きな賃下げ(実質は財産没収)を実施することが憲法上問題ですし、景気浮揚を妨げることにもなってしまいました。被災地の復興は終わっていませんが、賃下げ措置は2年間でうち切られており、単なる公務員バッシングであったと疑われます。

このような公務員バッシングを拡大すべく、政府は、公務員ではない独立行政法人や国立大学法人の職員にも賃下げを実施するよう、これらの法人に要請しました。
しかし、これらの法人は国の一部ではなく、民間の労働法制の下に置かれていますから、労使の合意のない賃下げは原則として禁止され、労働契約法10条の要件を満たした場合にのみ例外的に認められます。国は、これら法人に賃下げを強制する権限を持ちません。
そして、労働法上、例外的に賃下げが認められてきたのは、資金繰りが困難な場合でした。

京都大学は政府の要請を受けて、2012年度・2013年度の運営費交付金の削減に応じました。労働組合は団体交渉で、復興財源の執行には問題があり政府に抗議すべきだと主張しましたが、受け入れられませんでした。ともかく、京都大学は2か年分の復興財源を政府の要請どおり拠出したのです。

同様の経過をたどった多くの国立大学では、交付金の削減によって財政が圧迫されました。
しかし、大部分の大学では民間企業ほどの経営の合理化ができておらず、無駄をなくせば収入の減少にも対処できる状態でした。もっとも、国立大学会計基準は、赤字決算となる場合も認めているので、2年間の措置であれば乗り切ることは比較的容易だともいえます。実際には、数か年にわたって赤字を出している国立大学もあります。
このような中で、多くの国立大学が、財政難を理由として教職員の賃下げを強行しました。
そのため、全国で提起されている賃金訴訟では、大学法人に資金があったのかどうかが主要な争点になっています。

ところが、京大は、資金獲得能力が高かったため、財政面に余裕がありました。
定期預金だけで210億円があり、執行年度すら決まっていない予算も数十億円に上っていたのです。それにもかかわらず、京大法人は、教職員の賃下げを強行しました。その賃下げの率は、国家公務員よりも縮小されていましたが、「運営費交付金の削減額が減少するとかえって教職員の給与減額率が上昇する」という、明らかに誤った計算式を使って定められていました。
労働組合のメンバーらは、引き下げられた分の賃金を支払うよう求めて、2013年6月に京都地裁に提訴しました。後から参加した人も含めて、原告団は115人になりました。

2015年5月7日に、裁判所は、原告の請求を棄却する判決を下しました。そこでは、
・ 京大法人に十分な資金のあったことが認定されましたが、それによって「給与減額を実施する必要性が否定ないし減殺されるということにはならない」とされ、これまでの判例で積み重ねられてきた労働契約法10条の運用が完全に拒否されました。
・ また、運営費交付金の削減分が現実には震災復興に用いられておらず、法人がそのことを知っていても、そのような事情を「確定的に認識」していたのでなければ無視してよいとされました。
・ さらに、賃下げは財源があっても強行できる以上、「特段の計算根拠なく減額率が定められていたとしても」関係ないとされました。

判決は、

国家公務員に準じるということのみをもって賃下げを強行できる

としたのです。

もちろん、これは法律の考え方に反しています。
国立大学法人法が準用する独立行政法人通則法は、職員の給与を定める際に考慮しなければならない要素として、次のものを列挙しています。
(1) 国家公務員の給与等
(2) 民間企業の給与等
(3) 法人の業務の実績
(4) 職員の職務の特性及び雇用形態その他の事情
(2015年4月1日施行前の旧法の文言は「法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定められなければならない」でしたが、実質的な内容は変わっていないと考えられます。)
つまり、
・ 国家公務員からかけ離れた水準とすべきではないけれども、
・ (2)~(4)の要素を考慮して、
・ 労使合意の下で定められることが原則であり、
・ 労働契約法10条の条件を満たす合理性のある場合に限って例外が認められる
ということになるのです。

内容の不合理な賃下げを強行してよいとする法律は存在しません。

本判決の抜粋をこちらに載せました▼
20150507KyotoUniJudgment.pdfをダウンロード

※ 5/10 判決全文もアップロードしました▼
150507kyotounivjtall.pdfをダウンロード

5/7の報告集会でも述べましたが、本件は国際人権の問題を提起しています。
欧州評議会のオブザーバー資格を有する国である日本で、法律を無視した裁判が行われている事実を、海外に向けても知らせようと思います。

本記事のPDFファイルです▼
20150509Kyodai.pdfをダウンロード

5/15 ポスターできやした▼Tondemo_25/17の労働法学会@近大に判決抜粋を配りに行きます。
見かけたら声をかけてくださいね\(^o^)/

5/18追記: 持参した部数が全く足りず、一部の方にしかお配りできませんでした。
大変申し訳ございません。
恐れ入りますが、PDFファイルをダウンロードしていただけるとありがたく存じます。
何とぞよろしくお願いいたします。